共存共栄で勝機を掴む!


2014919日、中国の電子商取引会社阿里巴巴集團(Alibaba Groupは、ニューヨーク証券取引所に上場し、時価総額2310億ドルの企業となりました。創業者は、中国江蘇省杭州市出身の馬雲氏。アメリカ検索サイト大手Yahoo!社の創業者で台湾台北市出身の楊致遠氏や在日韓国人2世で日本のソフトバンク社を創業した孫正義氏と深い親交があります。東アジアの国々(中国、台湾、韓国、日本)を代表する経営者である彼等の頭の中に、どんなビジネスモデルが描かれているのか大変興味深く感じています。

 

「世界の工場」として急激な経済発展を遂げた中国。日本の10倍以上の人口を有し、安い労働力を背景に加工貿易を行い、GDP(国民総生産)は2013年度日本を抜き世界第2位となりました。1992年の改革開放政策開始から現在も景気拡大が続き、中国各地で高速道路や鉄道、飛行場等の社会インフラ、農村のインフラ、公共住宅等の整備が急速に進展しています。中国の最大輸出国はアメリカ、最大輸入国は日本。日本から原材料と技術を輸入し、それを加工しGDP世界第1位の先進国アメリカへ売る。低い労務コストを活かしたビジネスモデルを考え出した中国人達。今後もアメリカ市場での事業拡大を目指し、ボリュームゾーンが求める低価格で高品質なリーズナブルな商品、更には自社技術の向上に伴い中流階級以上が好むハイエンド商品を続々と製造し続けます。

 

勤勉な気質を持つ日本人は、1945年の終戦後約70年間、中国の3倍の時間をかけてこつこつと創意工夫を凝らし、GDP世界第3位の経済大国に相応しい安全・安心・快適に関わる製品やサービスや社会インフラを整備してきました。それらは全て、今でも大半の中国人には驚きと羨望の対象となっています。しかしながら、中国江蘇省無錫市に会社設立(20123月)以来、毎月1週間ほど現地に滞在してみると、経済大国日本で中流階級の暮らしに馴染んだ身にとっては、日常生活で当たり前と思っていることが中国ではそうでないことに気付きます。例えば、家の中では、水道水はそのまま飲んでは腹を壊す、換気のために窓を開けるとかえって部屋の中が風塵で汚れる。また、外出時は、製造年月日や賞味期限が不明で極端に低価格な食品の販売、横断歩道は自動車優先、タクシー乗車中に道路を逆行してくる車に間一髪等信じられない出来事にいつも不安を感じています。日中間の一人当たりのGDPを比較すると、中国は日本の5分の1以下。日常生活の隅々に、経済大国の恩恵が浸透するのはまだ先の話のようです。

 

最近の日本経済は、1991年の安定経済成長終焉から「失われた20年」。中国とは逆に景気低迷を続けています。日本はかつて、高所得者と低所得者が少なく中流階級層が多いと言われていましたが、最近はワーキングプアーが増え、中流層の厚みがどんどん薄くなっています。一方、経済発展により所得格差が顕著になった中国。仮に人口の1割が高額所得者と想定すると、中国には日本の総人口に匹敵する高額所得の上流階級が存在します。上述の不安も、少なくとも家庭内の事は、ほとんどが「お金で解決」可能です。日常の風景の中で、ピカピカに磨いたベンツにたまに乗る日本人と泥塗れのベンツを足代わりに乗る中国人をよく見かけます。面子を尊ぶ中国人にとっては、まさにチャイナドリームを実現した証し。そして誰もが我先に一獲千金を夢見て、多数のベンチャー企業が続々と創業しています。そして、彼等が活用するのが阿里巴巴集團の企業間電子商取引サイト「淘宝網 (Taobao.com)」や電子マネーサービス「支付宝 (Alipay)」であり、既に世界各国、地域240か所で5400万超える登録ユーザがいます。

 

加工貿易の更なる拡大で高額所得者増大の可能性に溢れる中国。今、無視できないのは日本が有するハイテク技術です。日本人は、「失われた20年」からの脱却を目指し、中国人に勝る新たな技術を創出し彼等の事業拡大活動を上手に支援することに当面は最注力すべきと考えます。近い将来、中国人労働者の賃金向上に伴い、中国のボリュームソーン6億人が順次中流層になる時が到来します。また、労務コスト増大に伴う既存ビジネスモデルの破綻が避けられません。我々日本人は今、中流層社会の生活経験を活かし、付加価値の高い技術イノベーションに基づく新たなビジネスモデルの構築を準備し始めるタイミングです。

 

今、中国人の1割、日本の総人口とほぼ同数の人は超高級車を所有し、日本人のようにピカピカに洗車もせずに足代わりに乗っています。面子を尊ぶ中国人にとって、泥まみれのベンツこそがチャイナドリームを実現した証しなのです。彼等に続けと若者達が一獲千金の夢を追い、ベンチャー企業が日々誕生しています。もちろん、中国人経営者は、技術イノベーションによる高付加価値商品の創出が企業存続、成長の大きなポイントであることを知っています。しかし、多くの従業員を食わせるためには、追加投資不要なレガシー技術を用いた今日売れる商品で日銭を稼ぐ、目先の利益を優先しがちです。

 

日本人の先行技術開発と中国人の世界市場拡大、互いに得意とする領域での補完関係構築ができた時こそ、勝機は我等に有り!(三国志:趙雲)

                                            2014年9月22日

                                            德田 清